ラブクエスト
メーカー:徳間書店

結婚式の日に目の前で消えた自分の花嫁「ゆかさん」を捜しに、旅に出る決心をしたマザコン男の物語を描いたRPG。彼の甘いマスクに吸い寄せられる女の子たち(おばさん含む)を、自慢の口説きで蹴散らしつつ、ひたすらに「ゆかさん」を捜しつづける主人公の姿は、何ともけなげである・・・・・・なんてこのゲームは生ぬるいものではない。数え上げればきりがない、制作者の異常性が露出した究極の異色作なのである。

ラブクエストのここがすごい!

ゲームバランスがたがた

このゲームは、システムが独創的というわけではない。というより、まるっきりドラクエのパクリである。しかも、戦闘バランス悪い、移動がかったるい、一本道なシナリオ、お使いに走るのみのイベントなど、明らかにパクリ方に失敗している。ひどいのは敵とのエンカウント率で、わかりやすく言えば、レベル上げという作業をする必要がない、というか無理矢理させられたという程度である。なにせ2,3歩に一歩敵が出てくるので、次のイベントの場所につくまでにそこで必要なレベルを軽く達成してしまうのだ。
ちなみに、敵は街の女の子。主人公の魅力に魅せられアタックをかけてくるのだとか。おいおい2,3歩歩くだけで3,4人の女の子に言い寄られる甘いマスクってどんなんだ!?しかも言い寄られてなぜ体力が下がる?つまりは無理矢理RPGのフォーマットに載せただけの、全くいただけないシステムなのだ。しかもシナリオはまるっきりの一本道。頭を空っぽにしても次にやることがわかるほど親切にお膳立てしてくれる。イベントをクリアするには、「あれやれ」と言われたことを犬のように忠実にこなせばいいだけである。

ここまでいけないゲームになってしまった「ラブクエスト」。
しかしそんなことは制作者は百も承知である。いらいらする戦闘シーンも、やらされる感じの強いイベントの数々も、このゲームの世界に触れたものは、誰もがわざとそう作ったに違いないと感じずにいられない。それほどなのだ。それほどまでにこのゲームの世界は壊れている。

「確信犯的バカゲー」

なぜこのゲームはスーパーファミコンで発売できたのか。任天堂の検閲基準は何なのか。そう問いたくなるくらい、「ラブクエスト」にはモラルナッシングな面々がひしめき合っている。本能をさらけ出した俗物があられもない言葉を連発し、半ばゲームの登場人物であることに疲れた奴らが、用意されたセリフをいかにもかったるそうに吐きつける。街中どこに行っても、そのいずれかの人間しか存在していないのだ。そのセリフの凄まじさは、もうPTAのお母様方が顔を歪めて悶絶しそうな程。(体験したい方は、ここからどうぞ。これでもまだ序盤である。壊れ具合がわかるだろうか)極めつけは「制服パパ」名前からして危なさたっぷりだが、セリフもまた一級の危なさである(知りたい人はゲームをやってみて)。何せ説明書記された彼の説明が、「腰を振ってないと死ぬ」ときたものだから、他の追随を許すはずもない。その上このおっさん、印象は抜群に強いがゲーム進行には何ら関係がない。下手すると見逃しそうな所に現れては、懸命に腰を振っている。こいつを考え出したやつはいったい何を思っていたのだろう。
中には、「これはやめてくれ」と任天堂からクレームが付いて、泣く泣くカットしたセリフやイベントがあるそうだ。「がったいしたんでちゅぅ」がよくて何が駄目なセリフだったのだろう。 カットされたイベントの中には、船を沈ませないために何人もの子どもを海に投げなければならないといったものもあったらしい。もはやスタッフの辞書に「道徳」といった文字はない。

結局、後にシナリオを書いた人がインタビューで言ってたように、ラブクエストは「意図的に作成したバカゲー」なのだ。パッケージに書かれているこのゲームのジャンルは、「パロディRPG」パロディの域をはるかに越えているような気がするのだが、確かにRPGに対する批判めいた(バカにした?)ところが随所に現れている。RPG好きを自認する方は是非このゲームをやって欲しい。RPGの在り方に懐疑的になること請け合いである。

他の能書きも一応見てやる
おまえ何かうるさいだまれ